5582.不惑を迎えた日本の新交通システム その12 番外編①~札幌市営地下鉄の詳細

5582.不惑を迎えた日本の新交通システム その12 番外編①~札幌市営地下鉄
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記事タイトル 5582.不惑を迎えた日本の新交通システム その12 番外編①~札幌市営地下鉄
概要

-その11(№5574.)から続く-毎週火曜日の更新が守れず申し訳ありません。今後は更新日を変更することも検討しております。 では本題。今回と次回は、AGTとよく似た、しかしAGTとは異なるシステムを取り上げます。それがゴムタイヤ式地下鉄とガイドウェイバスなのですが、い…… more ずれも日本の事例を取り上げることにいたします。よって、今回はゴムタイヤ式地下鉄としては日本で唯一となる、札幌市営地下鉄を取り上げましょう。今年は、昭和46(1971)年に南北線北24条-真駒内間が開業して、ちょうど50年の節目の年に当たります。これにより、札幌は東京・大阪・名古屋に次ぐ、日本で4番目の「地下鉄都市」となりました。当時横浜でも地下鉄の建設が進んでいて(現在の横浜市営地下鉄ブルーライン)、札幌と横浜のどちらが「4番目の地下鉄都市」になるかが注目されていましたが、1年札幌が先んじたことになります(現ブルーライン伊勢佐木長者町-上大岡間の開業は昭和47(1972)年の12月16日)。札幌の地下鉄計画が現実化したのは、当時既に市内の道路交通が飽和状態になっていて、バス・路面電車のみでは限界が見えてきたことと、昭和47年に札幌冬季五輪の開催を控えており、選手・観客・関係者の円滑な輸送のために、輸送力の大きな公共交通機関が望まれたことが理由です。しかし、このことは、「地下鉄が望まれた理由」ではあっても「ゴムタイヤ式地下鉄を採用した理由」にはなっていません。ただ地下鉄を建設するだけなら、他都市のような普通鉄道と同じ方式でも事足りたはずだからです。ではなぜ、札幌はゴムタイヤ式地下鉄を採用したのか?その理由は、路面電車の代替輸送機関として、路面電車の停留所の間隔と同じくらい、具体的には300~400メートルの間隔で駅が設置されることが想定されていたところ、そのような短い駅間の路線で速達性を確保するためには、加減速性能に優れ、なおかつ急勾配に強いゴムタイヤ式地下鉄が望ましいと考えられたことが理由です。ちなみに、ゴムタイヤ式地下鉄の採用に落ち着くまでは、市当局は、欧州の都市によくある「路下電車」、つまり路面電車をそのまま地下に潜らせた方式の採用に傾いていたといわれています。しかし、路面電車をそのまま地下に持ってきただけでは、渋滞や積雪のリスクは回避できるものの、輸送力の小ささは課題となりました(仮に連接車を導入しても、普通鉄道の1.5両分の輸送力にしかならない)。そこで、最終的に「路下電車」の計画は放棄され、現在みられるゴムタイヤ式地下鉄となったわけです。ところで、地下鉄の建設が具体化したのは、建設が市議会で議決された昭和42(1967)年ですが、その当時はまだ、札幌市の人口は100万人に達していませんでした。そのためか、地下鉄の建設計画も、当時の大蔵省に赤字を懸念されて建設補助に難色が示されていました。大蔵省を訪ねた札幌市の交通局長太刀豊に対し、大蔵省の官僚は「中山峠には熊が出るそうですが、そんなところに地下鉄を走らせて熊でも乗せる気ですか」と言い放ちました。今の感覚なら、この官僚の発言は完全に「中央の地方に対するヘイト」ですが、当時はそのような意識はなかったのでしょう。しかし、そのような「暴言」に対して、太刀豊は平然と受け流します。その答えは何と、「熊でも金さえ払えば乗せますよ」。その後交通局では、ゴムタイヤ式地下鉄を想定した様々な試験車を世に出しました。有名なのが、マイクロバスをベースにゴムタイヤなどの走り装置を取り付けた「はるにれ号」ですが、最もインパクトがあったのは、プレートガーダー橋の橋桁に運転台と走り装置を取り付けたような「すずかけ号」でしょう。また同時に、札幌が寒冷な気候であることから、地上区間で使用することを想定した除雪用車両も試作されましたが、こちらは、南北線の地上区間が全てシェルターに覆われることになったため、「地下鉄の除雪車」は日の目を見ませんでした。これらは、南北線自衛隊前駅高架下の「札幌市交通資料館」に保存されていて、「はるにれ号」「すずかけ号」は、休館日でも並行する道路から眺めることができます。管理人も見てきましたので、いずれご紹介できればと思っています。札幌市営地下鉄の方式は、中央の案内軌条をゴムタイヤで挟み、その両側に走行用のタイヤを配するというもので、これはまさに、中央案内軌条式のAGTと同じです。つまり札幌市営地下鉄のシステムは、あの「VONA」とほぼ同じシステムということになります。もっとも、厳密には早期に開業した南北線と、後に開業した東西線・東豊線とはシステムは微妙に異なっていて、前者は第三軌条集電であり走行面を耐摩耗性の高い樹脂で覆っているのに対し、後者はパンタグラフによる架線集電を採用し、かつ走行面にはフラットな鋼(鉄板)を敷いています(ただし東西線の一部区間には、南北線と同じように樹脂で覆っている区間もある)。開業に際して投入されたのは、2車体連接の1000形・2000形。2連が1000形、4連が2000形とされ、閑散時には2連で運転することも考慮されていたようですが、利用客の増加によりその構想は早々に放棄され、6連→8連と編成が増強されていきました。札幌市営地下鉄の連接車は、1000形・2000形と昭和53(1978)年の麻生開業に際して登場した3000形だけで、東西線用の6000形は通常のボギー構造とされ連接構造を放棄、後に南北線に投入された5000形は通常のボギー構造となりました。現在、札幌市営地下鉄の現役車両は南北線用5000形、東西線用8000形、東豊線用9000形の3車種ですが、いずれもボギー構造となっています。札幌市営地下鉄は、開業時は南北線のみでしたが、昭和51(1976)年に2路線目となる東西線の琴似-白石間が開業、大通駅で南北線と接続し、札幌の地下鉄では初の乗換駅となりました。さらに昭和63(1988)年には、3路線目となる東豊線栄町-豊水すすきの間が開業、その6年後には同線の豊水すすきの-福住間が開業し、これにより現在の札幌市営地下鉄の路線網が完成しています。ところで、ゴムタイヤ式地下鉄にはメリットだけではなく、デメリットもあります。それは、独自規格となるため他社・他事業者との車両規格の共通化ができず、新型車両の導入にコストがかかることと、走行システムが他と異なるため、既設の普通鉄道との相互直通運転が困難であること、の2点。前者は経営的にはデメリットですが、乗客からすれば悪いことばかりでもありません。札幌市営地下鉄の車両の車幅は、新幹線以外では最も広く、約3メートルに達しています。そのため、車内は広々としていて全く圧迫感を感じません。しかし、後者のデメリットは最近注目されるようになっています。それは、JR北海道の路線との相互直通運転が模索されるようになったから。札幌都市圏の人口増加と共に都市圏の拡大も進み、国鉄からの改組を機に都市型ダイヤへ転換したJR北海道が都市圏需要をつかむようになったことから、市内中心部へ到達できる地下鉄との相互直通運転が求められたわけです。しかし、ゴムタイヤ式地下鉄と普通鉄道の相互直通運転など、例はありません。確かに世界的には、パリやメキシコシティなどの地下鉄路線で、ゴムタイヤ式と普通鉄道が並立していますが、あれはゴムタイヤ式の走行システムを普通鉄道にも合わせているから可能になっていることで、そうではない札幌市営地下鉄では至難の業です。実際に技術的には不可能ではないようですが、コストがかかりすぎて現実的ではないとのことです。日本では札幌の後、横浜・神戸・福岡・京都・仙台と地下鉄が開業しましたが、「札幌方式」はどこも採用しませんでした。これを札幌市の失敗とみるかどうかは、評価が分かれるような気がします。次回は番外編その2として、ガイドウェイバスを取り上げます。-その13に続く- close

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サイト名 さすらい館
タグ 地下鉄
投稿日時 2021-08-20 00:34:03

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