お弁当の量が減ったり、おにぎりやお菓子のサイズが小さくなったりしたにもかかわらず、値段は変わらない。こういうのを巷では「ステルス値上げ」というそうですが、このような流れは、長引くデフレ下において大っぴらな値上げがはばかられるため、それならば分量を減らすとかサイズを小さくするとかで…… more 材料費を抑えようというもの。そのような「ステルス値上げ」の波が、まさか鉄道の世界にまで押し寄せるとは思いませんでした。 既に「乗りものニュース」ではこの話題が取り上げられております。 乗継割引＆B特急料金廃止に“悲鳴” 23年春から料金見直し JR西日本と四国 | 乗りものニュース「サンライズ」で安く浮かせるワザが使えなくなる……。trafficnews.jp JR西日本（JRW）の大本営発表はこちら。 在来線特急料金の一部見直しについて：JR西日本JR西日本ホームページwww.westjr.co.jp ↑のリンクからPDFファイルに飛ぶのですが、そこには大要、2つの点が告知されています。その2点とは ①　在来線特急料金をA特急料金に統一、特定特急料金の見直し②　岡山～新下関間における「乗継割引」の廃止 で、来年、令和5(2023)年4月1日から適用されるとのことです。 B料金対象だった福知山線特急は実質的には値上げとなる（写真の183系800番代は現在では全車退役しています） B料金（B特急料金）とは、国鉄時代末期に従来の特急料金（A特急料金）よりも割安に設定したもので、短距離利用者に配慮したものとされています。もともとは「踊り子」や房総特急が「料金に見合ったスピードではない」「急行に比べて料金が高額で、ぼったくりではないか」という利用者の批判にこたえる形で、割安な料金を設定したもの。その後九州や関西地区にも拡大され、現在に至っています。関西地区のB料金適用路線は、上記PDFによれば「七尾線、山陰線(京都～浜坂間)、舞鶴線、福知山線、播但線、ＪＲ京都線、ＪＲ神戸線、大阪環状線、阪和線、関西空港線、きのくに線（和歌山～新宮間）」ということで、列車で言えば「こうのとり」「はまかぜ」など京都・大阪発着の山陰線方面行き特急と「はるか」「くろしお」が該当することになります。これらの列車は、京都・大阪基準で150～200kmが利用者が最多になると思われますが、これらの区間はいずれも440円の値上げとなります。その他にも、特定特急料金の見直しも謳われており、こちらも100円～480円の値上げとなっています。さらに博多南線における特急料金も、現行の100円が130円とされます（博多南線は新幹線車両で運転される在来線の扱いだが、全列車特急列車とされ、そのため少額でも特急料金を徴収している）。 「サンダーバード」の七尾線区間も値上げとなる さらに衝撃的だったのは、乗継割引の範囲を縮小すること。前記PDFファイルによれば、 山陽新幹線の岡山～新下関間の新幹線停車駅で、新幹線と在来線特急列車とを乗り継ぐ場合に適用となる「乗継割引」を廃止します。 とあります。 これに該当するのは ア　岡山での四国方面への乗り継ぎイ　岡山での「やくも」「いなば」への乗り継ぎウ　岡山での「サンライズ出雲・瀬戸」と新幹線の乗り継ぎエ　新山口での「おき」への乗り継ぎ ということになります。特にインパクトが大きいのは、アの四国方面への乗り継ぎです。乗継割引によって割り引かれる特急・急行料金の相当額は、JR発足後は新幹線を保有する会社が面倒を見ていたとのこと。となると、現在は四国方面への特急の料金が割り引かれる部分をJRWが面倒を見ていたことになりますが（恐らくJRWがJRSに補填金を支払う形態だろうと思われる）、その負担も馬鹿にならなくなってきたということでしょう。有体に言えば、JRWが「ギブアップ」したということです。イ・エは同じ会社内での乗り継ぎですが、これは乗継割引の取り扱いを止め、特急料金をしっかり徴収したいという狙いでしょう。しかし、豊岡・鳥取方面に向かう際には乗継割引が適用されるのに、米子・出雲市方面へ向かう際には適用されないというのも、どうもバランスを欠くような気がするのですが…。この「バランスを欠くと思われる問題」は、残りのウにもあります。なぜなら、乗継割引の対象外となるのは「岡山～新下関間の新幹線停車駅」ですから、岡山での乗り継ぎでは乗継割引は適用されませんが、姫路駅で乗り継ぐとしたらどうでしょう？　これだと乗継割引が適用されることになりますが、それはいいんでしょうか。 かつて、JR東日本（JRE）管内で乗継割引の対象駅を限定する措置がとられ、現在に至っています。東北新幹線は八戸（のちに新青森又は青森）、上越新幹線は越後湯沢・長岡・新潟、北陸新幹線は長野だけとなり、それ以外の駅で乗り継いでも割引がなされなくなりました。これについて、管理人は理不尽な感がしたことも事実ですが、旅客流動の実態に即したものだと思えば、やむを得ないところもあります。しかし、今回のJRWの見直しは、以前のJREのそれとは異なり、多くの利用がある駅を除外しています。これは明らかに、乗継割引の適用除外による特急料金の実質的値上げ。コロナ禍による乗客減で「なりふり構っていられなくなった」というのもあるのかもしれませんが、今回の措置は巷の「ステルス値上げ」と同根だと思いました。 ◇関連記事（乗継割引の制度の歴史を概観した記事）『1924.それは「あかつき」で始まった～国鉄・JRの乗継割引制度』昨日、ツイッター 上で「乗継割引」のお話が出ました。これは、読んで字の如く「乗り継ぎの場合の料金割引」の意味ですが、この制度は国鉄時代に始まり、形を変えて現在…ameblo.jp 【おことわり】当記事で使用している写真は、全て以前の記事からの転載です。 close

5923.「ステルス値上げ」は鉄道の世界にも？　JR西日本、特急料金と乗継割引の制度見直しへ