鉄道時計（腕時計）と言えば、シチズン「ホーマー」があまりにも有名になりすぎちゃった感がありますが（“まつもと”調べ）。実際に初めて車掌用として腕時計を納入したのはセイコーでした。知る人ぞ知る、今ではすっかり高値で取引されてしまっている「セイコー・クラウン」です。実物を手に入れる機…… more 会も財力もショートしているので、いわゆる「トンボ本」の「セイコー・クラウン」の表紙が鉄道時計！画像はトンボ本（しかも図書館で借りた本）から拝借です。※　「トンボ本」とは、国産アンティーク時計のコレクターの必携書で、　　アンティーク時計の資料館のような本なんです。　　出版社が「トンボ出版」なので「トンボ本」、と呼ばれています。「セイコー・クラウン」は市販品ベースの腕時計で、一般に市販されていたのはバーインデックスのものです。干支が全数字表記なのは、鉄道時計として納入された「クラウン」だけのようです。「セイコー・クラウン」と「シチズン・エース」、新参の「シチズン・ホーマー」が三つ巴になって車掌向け鉄道時計（腕時計）を納入しますが、結局、製造工程が機械化され単価を切り詰めることができた「シチズン・ホーマー」が生き残り、その後の「CQ」デザインにも大きな影響を与え続けます。セイコーは懐中時計、シチズンは腕時計、と鉄道時計の中でも棲み分けがされてきましたが、國てうが民営化され、JR発足ののちはJR各社や、JRのなかの支社単位での発注がされるようになったようです。JR東日本新潟支社は、「セイコー・クロノス」を一時発注、鉄道時計には珍しい、デイデイトのお時計です。その後の発注先は、再びシチズンになったようですが・・・デイデイト表示と、「Chronos」ロゴです。「セイコー・クロノス」もかつての「セイコー・クラウン」同様市販品ベースの時計です。ちなみに、アンティーク時計のコレクターさんなら、機械式の「クロノス」をご存知かと思いますが、あちらは「Cronos」。「農耕の神」です。のちにはこれをベースに高性能化が進み、「グランドセイコー」にまで進化していく、スゴいお時計なんですよ。クオーツ「クロノス」は「Chronos」と「時の神」の名前になりましたが（初代「クロノス」の綴りはセイコーの中の人が間違えたんだよね！）クオーツ「クロノス」は平成元年ごろのお値段が1万円から2万円程度。随分とお安い時計で精度が出せるようになったものです。技術の進歩を賞賛すべきなんでしょうが、ちょっと寂しいですね。特別のスペックを持った「鉄道時計」の終焉を物語っているようなのですから。裏ブタには「平元　3XX／JR新潟」の刻印がありますが、波マークは、ねじ込み竜頭の採用で防水性が上がった市販品と同じマークです。そして、シチズン「CQ」が車掌さんの腕時計を席捲していく中、一部の支社ではさらにチープな市販品そのものの時計を貸与するようになります。JR東日本で実際に納入された、「吊るし」の時計です。今なら「チプカシ」と呼ばれるような「カシオ」の電波時計です。カシオ「ウェーブセプター　WV56H」　実売5000円程度（廃盤）カシオ「ウェーブセプター　WV58J」　実売6000円程度もっとも、これらの「カシオ」勢は「エラー表示が消えない」「受信に失敗して使えない」「なぜかすべてリセットされた」など、性能面で大きな問題がありました。そこで、「カシオ」の営業さんがうまいこと売り込んだのが、カシオと言えばの「G-SHOCK」です。カシオ「G-SHOCK　G-5600」　市販品そのまま。電波機能のあえてついていない、クオーツモジュールの一般的なデジタル時計です。G-SHOCKの裏蓋の刻印（正確には硬質のプリント）たまたま入手できたのがJR東日本「松戸車掌区」のモノでしたが、JR九州では現業社員に貸与される時計が黒の「G-SHOCK　G-5600」に統一されているようです。新幹線の車掌さんは、「制服に合わない」とG-SHOCKを避けるんだそうですがJR九州は、「実用品で職員の手荒な扱いにも壊れないのが一番」とドバーっと貸与したようですね。さて、車掌さんの腕に巻かれていた「鉄道時計」ですが、時計そのものが高価で貴重品だった時代から、単なる電子デバイスにまで価値が下落してしまったものですから、私鉄では車掌さんが私物（もちろん届出してOKされたもの）の時計をしていることが多くなりました。JRでも運転士が懐中時計とはほかに腕時計をしていることもあります。（鉄道時計や車両の時計のバックアップという意味もあるらしい）「鉄道時計」で最後まで残ったのは、結局「19セイコー」にルーツを持つ懐中時計やシチズン「ホーマー」にルーツを持つシチズン「CQ」シリーズといった歴史のあるものになっちゃうんだな・・・と。「G-SHOCK」が悪い時計とは全く思いませんが、鉄道時計というモノとはちょっと違うんですよね･････ま、正確さが命の鉄道時計。G-SHOCKが正確ならば、コスト面・メンテナンス面でググッと有利ですよね！ close

鉄道時計・腕時計編(3)～シチズン1強からセイコー、カシオの巻き返し！